Q&A

放射線量測定について

放射線量測定は誰でも出来るものですか?
法令上等では、測定を行う為の資格等の明確な規定はありません。
しかし作業において専門的な知識を要することが多く、診療放射線技師、作業環境測定士、放射線取扱主任者、エックス線作業主任者等、エックス線に関する専門的な知識を有する者が行うことが望ましいと思われます。
放射線を測定するためにはどのようなものを使用するのでしょうか。
放射線測定器を使用します。
測定には、測定の目的、性能、測定可能な線量率の範囲を考慮し適正な校正がされているものを選択します。
放射線測定器には「電離箱式サーベイメータ」「GM管式サーベイメータ」「シンチレーション式サーベイメータ」「半導体式サーベイメータ」等があります。
一般的に管理区域境界における放射線漏洩線量測定には「電離箱式サーベイメータ」が適しています。
「電離箱式サーベイメータ」とは、X線・γ線を検知できる放射線測定器です。
測定器は床から1mの高さとし画壁の外側で測定します。
エックス線診療室は定期的に線量測定が必要ですか?
必要です。
医療法施行規則第30条22により、エックス線診療室に新しくエックス線装置を設置した時(管理者変更・法人化を含む)、エックス線装置を更新した時、エックス線装置及びエックス線診療室の構造変更等をおこなった場合、線量測定を行わなければなりません。
エックス線装置設置後、6カ月を超えない期間毎に1度定期的に線量測定を行う必要があります。
また、漏洩線量測定を行ったときは測定結果を記録し、5年間保存しなければなりません。
放射線測定器の校正は必要ですか?
放射線測定器はJIS規格に基づいて適正に校正されたものを使用することとされています。
ただし、標準線源等で定期的(最低1年間を超えない期間)にチェック又はメーカーで性能等が確認された測定器も、校正された放射線測定器に準ずるとみなして差し支えありません。
測定時に使用する被写体(ファントム)に決まりはありますか。
用途に応じて使用するファントムは違います。
線量率測定時:JIS-Z4915に規定された散乱線測定用ファントムを使用します。
積算線量測定時:JIS-Z4915に規定された散乱線測定用ファントムを使用します。
CT撮影:CT専用ファントムを使用します。
乳房撮影:ACRファントムを使用します。
口内法撮影:直径16cm程度の歯科用ファントムを使用します。
水ファントムについてはこちら
「積算線量」と「線量率」の違いを教えて下さい。
「線量率」は、1時間当たりの放射線量(Sv/h)をあらわします。
「積算線量」は、一定時間積算した放射線量(Sv)をあらわします。
バックグランド(BG)値とはなんですか?
宇宙線や地球上に存在する放射性物質など自然発生している放射線を言います。
測定値からこのBG値を差し引いた値が正しい測定値になります。
撮影条件が自動制御される装置での測定はどうすればいいですか?
適切なファントムを使うことによって、通常の診療時を模擬した計測が行えます。
放射線診療で介助する場合はどれぐらい離れればいいですか?
医薬発第188号では2メートル以上にするべきとされています。
患者から出来る限り距離を取ることが必要です。
「散乱線」とはどのようなものですか?
散乱線とは「人体または物体によって散乱された放射線」と定義しています。
移動型・携帯型放射線装置等は室内散乱線を測定します。
パルス透視や骨密度測定は撮影にあたりますか?
パルス透視や骨密度測定は、連続した撮影とみなし、透視に該当すると考えられます。
測定方法としては線量率で測定します。

エックス線診療室について

放射線の防護とはなぜ必要なのでしょうか?
放射線は痛みを伴わず診断や治療が出来るため大いに活用されてきましたが、逆に浴びすぎると生体への悪影響を及ぼします。
そのためICRP(国際放射線防護委員会)の勧告をもとにわが国でも医療法、関連法令等で被ばく線量を抑えるための数値が定められ、その数値以下にするための防護が必要となります。
放射線の防護にはどのような方法がありますか?
放射線の防護においては以下の3つが原則となります。

1.放射線照射時には、放射線の取り扱い作業を短縮すること。
2.放射線の発生源から離れて作業を行うこと。
3.放射線の発生源との間に遮蔽物を置くこと。
各場所においての線量限度を教えてください。
医療法施行規則では以下のように規定されています。

1.エックス線診療室の天井、床及び周囲の画壁の外側での実効線量は1週間につき1mSv以下とすること。
2.管理区域境界における外部放射線の実効線量は3月間につき1.3mSv以下とすること。
3.施設内の病室に収容されている病室の実効線量は3月間につき1.3mSV以下とすること。
4.人が居住する区域及び敷地境界の実効線量は3月間につき250μSV以下とすること。
エックス線診療室全体を遮蔽する必要があるのでしょうか?
医療法施行規則第30条の4には以下の記述があります。

天井、床及び周囲の画壁(以下「画壁等」という。)は、その外側における実効線量が1週間につき1ミリシーベルト以下になるようにしゃへいすることができるものとすること。
ただし、その外側が、人が通行し又は停在することのない場所である画壁等については、この限りでない。

上記の「その外側が、人が通行し又は停在することのない場所である画壁等については、この限りでない。」という例外規定の「その外側が、人が通行し又は停在することのない場所」とは、床下が直ちに土中の場合や壁の外が崖、地盤面下等である場合など極めて限定的な条件にある場合をいっています。
1階にエックス線診療室があり、その床下が土中の場合はこの限定的な条件に該当します。
エックス線診療室には観察窓を設ける必要がありますか?
法令上、エックス線診療室に窓を設けなくてはならないという規定はありません。
一般論としては、放射線診療の安全を確保するために患者を観察できる設備が必要だと考えられます。
2階のエックス線診療室に窓がありますが大丈夫ですか?
階下や道路などに滞在する人が受ける線量が、線量限度を超えないように気を付けなければなりません。
人通りの多い道路面に接している場合には防護が必要だと考えます。
遮蔽扉と床との間に隙間がありますが、そこから放射線は漏れているのでしょうか?
放射線の照射方向や撮影条件、部屋の広さ、散乱体からの角度等によっても異なりますが、通常では測定器に顕著に現れる漏洩はありません。
集合ビル内のテナントのため上下左右の壁が、他のテナントと接しています。 そのような場合の防護はどのようにすればよいのでしょうか?
集合ビル内のテナントの場合、東西南北、上下の6面全ての画壁が敷地境界扱いとなるため線量の限度が厳しくなります。(3月間で250μSv以下)
そのため防護工事には注意が必要です。
エックス線診療室の放射線装置の据付位置を変更した場合、遮蔽も変わりますか?
エックス線装置の据付位置を変更した場合には、放射線漏洩線量測定が必要です。
測定の結果、エックス線診療室の画壁等の外側の線量が、規定の線量限度以下であれば遮蔽はそのままで構いません。
しかし、規定の線量を超す恐れのある場合は遮蔽を追加する必要があります。
その際には各自治体への届出も必要となる場合があります。
遮蔽計算の際の管電圧はどの数値を使用しますか?
平成26年3月31日の法改正で、これまでの定格管電圧から実際の使用管電圧に改められました。
もしもエックス線診療室から放射線漏れが見つかった場合、どのように対応ればいいですか?
もし放射線漏れが認められた場合、放射線漏洩線量の数値やエックス線装置の使用頻度を考慮し、法令の線量限度を超える場合は改修工事が必要となります。
エックス線診療室内に操作室を設けてもいいですか?
エックス線診療室と操作室は隔壁等で区切られている必要があります。
ただし以下の場合はエックス線診療室内で操作をしてもよいとされています。
1.乳房撮影又は近接透視撮影等で患者の近傍で撮影
2.使用時において1mはなれた場所における線量が6μSv/h以下となる構造の骨塩分析用装置
3.使用時において機械表面の線量が6μSv/h以下となる構造の輸血用血液照射装置
4.組織内照射治療を行う場合
5.歯科用デンタルで1週間につき1000mA/秒以下で撮影

届出について

エックス線装置を設置する場合には何か届出が必要ですか?
エックス線装置を設置する場合には所定の届出書類を、病院又は診療所所在地を管轄する保健所・労働基準監督署等に提出が必要です。
エックス線装置の届出内容はどのようなものですか?
医療法施行規則では、次に掲げる事項を記載した届出書を提出することになっています。

1.病院又は診療所の名称及び所在地
2.エックス線装置の製作者名、型式及び台数
3.放射線高電圧発生装置の定格出力
各自治体ごとに届出書類がありますので、それらに必要事項を記入して提出します。
各種届出書は、いつ保健所・労働基準監督署等に提出すればいいですか?
エックス線装置を設置や更新した場合には設置後10日以内に管轄する保健所へ提出する必要があります。
また、労働基準監督署へは工事開始の30日前までにその計画を届ける事が義務付けられています。
放射線診療に従事する医師・診療放射線技師の変更の手続きは必要ですか?
基本的にはその都度の届出が必要です。
自治体によっては、異動のたびに手続きをするのは日常業務が煩雑になるため、装置の変更等のタイミングで同時にすればいいという自治体もあります。
透視と撮影用のエックス線管を持つ装置の手続きはどのようにしたらいいですか?
同一製作所によるエックス線装置であって、エックス線管装置が二箇あり、一つは、透視専用、他の一つは撮影専用で高電圧切換器によりそれぞれ操作、使用するものの届け出は1台の装置としての手続きで構いません。
エックス線診療室内の複数のエックス線装置の手続きはどのようにしたらいいですか?
複数の装置となるため、各々のエックス線装置ごとに届出することが必要です。
エックス線装置の管球を交換した場合の届出は必要ですか?
同一規格のエックス線管の交換の場合にあっては、届出は不要です。
ただし、エックス線管、高電圧発生装置、受像器等の機器の変更により、エックス線装置の防護基準に関する規格の変更等を伴う可能性がある項目については、届出を行う必要があります。
エックス線診療室には様々な標識を掲示しなければならないと聞きましたが、具体的にはどのようなものでしょうか?
エックス線診療室には基本的に「管理区域標識」「従事者用注意事項標識」「患者用注意事項標識」の3種類の標識を掲示しなければなりません。
「管理区域標識」は管理区域すべての出入り口の扉付近に掲示します。
「従事者用標識」と「患者用注意事項標識」に関しては文言等に特に決まりはありません。
「従事者用標識」は操作室等の放射線従事者の目につきやすい場所に、「患者用注意事項標識」は待合室等患者の目につきやすい場所に掲示します。
また、エックス線診療室内でエックス線装置を使用していることを周知させるために「使用中ランプ」の設置が必要です。
エックス線装置を使用中、誤ってエックス線診療室内に入室する事を防がなければなりません。
放射線関連標識についてはこちら
移動型エックス線撮影装置の保管場所を倉庫にしても大丈夫ですか?
保管場所に関しては特に規定はございませんが、その保管場所に施錠ができなければなりません。
また装置の鍵等の管理は適切に行わなければなりません。
移動型透視用エックス線装置の使用場所として適切な場所はどこですか?
移動型エックス線装置のうち、移動型透視用エックス線装置のエックス線診療室以外の使用は下記に限られています。

1.術中の病変部位の位置確認や手術直後の確認等を行うため、手術室に移動して使用する場合
2.エックス線CT撮影を併用した血管造影を実施するためCT装置を備えたエックス線診療室に移動して使用する場合
3.診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具により治療を行うべき部位を決定するため、診療用高エネルギー放射線発生装置使用室、診療用放射線照射装置使用室又は診療用放射線照射器具使用室に移動して使用する場合。
ポータブル装置の使用場所として適切な場所はどこですか?
移動型又は携帯型エックス線装置は、特別な理由でエックス線室への移動が困難な患者を撮影するため、一般診療室、病室および手術室等の管理区域以外の使用が可能です。
個人被ばく線量計の準備は必要でしょうか?
電離放射線障害防止規則第8条による放射線業務従事者、医療法施行規則第30条の18による放射線診療従事者等の被ばく防止には個人被ばく線量計の装着が義務付けられています。個人被ばく線量計には以下のようなものがあります。
1.ガラス線量計
2.熱ルミネッセンス線量計
3.OSL線量計
4.フィルムバッジ
5.ポケット線量計

エックス線装置に関する質問

エックス線管にはどのような基準が設けられていますか?
医療法施行規則第30条1項にて下記のように定められています。
エックス線管の容器及び照射筒は、利用線錐以外のエックス線量が次に掲げる自由空気中の空気カーマ率になるように遮蔽すること。
1.定格管電圧が50キロボルト以下の治療用エックス線装置にあっては、エックス線装置の接触可能表面から5センチメートルの距離において、1.0ミリグレイ毎時以下
2.定格管電圧が50キロボルトを超える治療用エックス線装置にあっては、エックス線管焦点から1メートルの距離において10ミリグレイ毎時以下かつエックス線装置の接触可能表面から5センチメートルの距離において300ミリグレイ毎時以下
3.定格管電圧が125キロボルト以下の口内法撮影用エックス線装置にあっては、エックス線管焦点から1メートルの距離において、0.25ミリグレイ毎時以下
4.1から4までに掲げるエックス線装置以外のエックス線装置にあっては、エックス線管焦点から1メートルの距離において、1.0ミリグレイ毎時以下
5.コンデンサ式エックス線高電圧装置にあっては、充電状態であつて、照射時以外のとき、接触可能表面から5センチメートルの距離において、20マイクログレイ毎時以下
「焦点皮膚間距離」とは何ですか?
エックス線管球から被写体までの直線距離です。
「焦点皮膚間距離」には法令で何か規則はありますか?
医療法施行規則第30条3項により下記のように規定されています。

1.定格管電圧が70キロボルト以下の口内法撮影用エックス線装置にあっては、15センチメートル以上
2.定格管電圧が70キロボルトを超える口内法撮影用エックス線装置にあっては、20センチメートル以上
3.歯科用パノラマ断層撮影装置にあっては、20センチメートル以上
4.移動型及び携帯型エックス線装置にあっては、20センチメートル以上
5.CTエックス線装置にあっては、20センチメートル以上
6.乳房撮影用エックス線装置(拡大撮影を行う場合に限る。)にあっては、20センチメートル以上
7.1から6までに掲げるエックス線装置以外のエックス線装置にあっては、45センチメートル以上
「総ろ過」とは何ですか?
エックス線は様々なエネルギーのものが混じって放射されてしまいます。
エネルギーが弱い放射線は放射線撮影には役に立ちません。
また弱いエックス線は軟線と呼ばれ皮膚に吸収されやすいというデメリットがあります。
「ろ過」とはいわゆる「フィルターに通すこと」で、この弱いエックス線を必要なエネルギーの放射線だけを人体に照射できるようにし、無駄な被曝を防ぎます。 このろ過の総量を「総ろ過」と呼びます。
各装置ごとに対する総ろ過の規定はありますか?
以下の規定があります。

1.定格管電圧が70キロボルト以下の口内法撮影用エックス線装置にあっては、アルミニウム当量1.5ミリメートル以上
2.定格管電圧が50キロボルト以下の乳房撮影用エックス線装置にあっては、アルミニウム当量0.5ミリメートル以上又はモリブデン当量0.03ミリメートル以上
3.輸血用血液照射エックス線装置、治療用エックス線装置及び上記に掲げるエックス線装置以外のエックス線装置にあっては、アルミニウム当量2.5ミリメートル以上